写真集

梁丞佑

唐仁原信一郎

藤原敦

服部雅人

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[写 真]
唐仁原信一郎「OFF LIMITS YOKOSUKA」
梁丞佑「青春吉日」
藤原 敦「跡III」
服部雅人「道行き」
[編 集] 長谷川 明
[発行者] アスファルト出版
[発行所] フジフィールド株式会社
[翻 訳] Miles Yebisu
[印 刷] 株式会社レーエ

【序文】

今号のゲストの梁丞佑(ヤン・スンウー)氏は異色のドキュメンタリー写真家といってよいかもしれない。 氏は1966年に韓国全羅北道の井邑に生まれた。1996年来日。日本写真専門学校、東京工芸大学を卒業しているが、 驚いたのは写真については日本に来てから興味を持ち、写真家の道を選んだという話であった。 表現行為として一人でやれるからというのが理由であったらしい。

今回の写真のテーマになっているのは、高校時代の友人の生と死の追憶である。 その友人は高校生の時に殺傷事件を起こし8年懲役に服したが、出所後も世間と折り合いがつかず縊死した。 ここに写っているのは関係のあった大田のヤクザたちの姿である。ヤクザにもなりきれず死んだ不発の青春であったが、梁氏にとっては無二の親友だった。

本人は直接写ってはいないが、その周辺を記録し追想した映像群である。梁氏は韓国で言う「386世代」に属する。 つまり30代で80年代の民主化運動の時代を過ごした60年代生まれということだが、独特の屈折があるようである。 氏は中学生のときに光州に向かう戦車の列を見たことを語っていた。(1980年光州事件)。 氏の写真の特色を述べると、被写体の懐に入るスタンスのうまさである。氏にはすでに『君はあっちがわ 僕はこっちがわ』(新風舎2006年)という写真集がある。

東京のホームレスたちを撮った写真だが、類書と異なるのは、すべて当人たちから直筆のコメントをもらっていることである。 今回の写真の展示のときにも何人かがギャラリーを訪れ、親しげに談笑していた。 これは撮影者とのあいだによほどの信頼関係がなければありえないことである。また氏の手製のフィリピンの写真集も見せてもらったが、 1週間で撮影したという話が信じられないほど密着している。あの国で外国人が銃を持った男を笑わせるなどなかなかできる芸ではない。

このまま埋もらせるには惜しいので、どこかで取り上げてほしいものである。既刊の写真集の方は不幸にも版元が倒産してしまったが、 本誌で扱っているので買っていただければありがたい(2100円)。抜群の力量を持ったドキュメンタリー写真家として将来が嘱望される。 なおチングとは友人のこと。

唐仁原信一郎氏の「YOKOSUKA」は私が彼に課したテーマである。写真には言い方は悪いが激戦区といえる場所があり、 広島、沖縄などとともに横須賀もそのひとつだ。すでに東松照明、森山大道、石内都らの作品がある。これでは撮りにくいことこのうえないが、 街は時代によって変貌するものであるし、同じリングに上がって勝負するのも面白いではないかというわけだ。 その結果は読者の判断にまかせるしかないだろう。

藤原敦氏の「跡」シリーズは今号で終了する。10月30日(金)から11月8日(日)まで新宿の蒼穹舎ギャラリーで写真展が開かれるので覗いてみていただきたい。 編集長としては次の展開を楽しみにしているが、「跡」が方法論が勝った映像だっただけに、今後の写真には熟慮が要求されるだろう。

服部雅人氏は1977年東京生まれ。あらかじめ言っておくと、これは偽名である。 小説家ならペンネームは普通のことだが、写真家では珍しい。何か不都合があって(弾圧される?)のことではなく、 遊び心らしいから意のとおりにした。氏にはすでに温泉をテーマにした優れた写真集があるから、写真をよく見ている人なら誰かすぐわかるであろう。 しかし、氏の変身願望は念が入っていて、嘘のプロフィールまで作ってきたので、面白いからそのまま載せる。

<1974年岩手県生まれ。高校卒業後、各地を放浪。様々な職を転々とする。現在は東京都在住。電気工事士。 主な個展に「カメレオン」「ポーカーフェイス」「狼少年」「現世は夢」「浮き雲」などがある>。

いやおかしい。本当にそんな写真があるのならぜひ見たいものである。

長谷川明

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