写真集

相澤恭行

藤原敦

桜井永治

西岡広聡

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[写 真]
藤原敦「蝶の見た夢 Part2」
相澤恭行「イラク-追憶の断片から-」
桜井永治「黒潮牧場・四国」
西岡広聡「一个人」
[編 集] 長谷川 明
[発行者] アスファルト出版
[発行所] フジフィールド株式会社
[翻 訳] Miles Yebisu
[印 刷] 株式会社レーエ

【序文】

今号のゲストの相澤恭行氏はいわゆる写真家ではない。1971年宮城県に生まれたが、フリーランスとして活動し、通訳なども務めていた。

氏がイラクに関心を持ったのは、9・11事件以降アメリカがどういう国になるのかに注目し、アフガニスタンとの戦争を経て、攻撃対象がイラクに及ぶのを見て、 その不当性を悟り抗議行動を始めた。

氏が「人間の盾」としてイラクに行ったのは開戦前の2003年2月のこと。以後戦中、戦後の2004年8月まで撮影を続けた。 イラク戦争は明らかにアメリカの都合だけの不当な戦争である。第一にアルカーイダとイラクは何の関係もない。

アルカーイダはイスラム教スンナ派の中のワッハーブという原理主義的集団から生まれたもので、世俗的権力者であるサッダム・フセインとは鋭く対立していた。 そのためフセインが生きている間はイラクには勢力を伸ばせなかった。

開戦の口実となった大量破壊兵器(WMD)の保有についても、それが事実ではなかったことは戦後認証された。 結局アメリカの目的は、国内軍事産業の維持、石油の安定供給、イスラエルの保護としか考えられない。

そしてアメリカのやったことは大量破壊兵器を駆使しての虐殺だけである。 日本への核爆弾の投下、東京大空襲をはじめベトナムへの無差別空襲など今に始まったことではないが、今回中東での劣化ウラン(DU)製武器、 クラスター爆弾の使用は非人道的と非難されるべきであろう。

DUは着弾後大気中に放射能をまき散らす。イラクでは戦後子供の白血病、癌、胎児奇型の増加が確認されている。 クラスター爆弾は投下後200あまりの小弾(ボムレット)に分解し周辺で炸裂する対人兵器だが、5%以上の不発弾が想定されており、それが今度は地雷として機能する。

これらをWMDと呼ばないのはアメリカの身勝手にすぎない。要するに9・11でアメリカが考えたのは言葉の置き換えだけだ。 自分たちの敵をテロリストと呼び、攻撃を正当化しているだけである。

ハーバード大学のМ・サンデル氏は『これからの「正義」の話をしよう』という本を出版されているが、 先住民を駆逐して成立したアメリカという国に建国以来「正義」など存在したのだろうか。それともアメリカの正義とは敵兵の死体に小便をかけることなのか。

藤原敦氏の「蝶の見た夢Part2」は前回の続編だが、今度は主人公の宮古島での平和な日常生活が撮影されている。 東京でのハードな生活と対照的なのが妙と言える。

桜井永治氏の「黒潮牧場・四国」は2009年3月に高知県、愛媛県という四国の太平洋側で撮影されたものだ。 氏の海への憧れと執着は3号でも少し紹介したが、それは海と港、海に働く人たちへの興味であって魚の話ではない。

氏は釣りはやらない。昔、不定期貨物船に乗って知らない港町に行きたかったというような関心の持ち方である。 今回の写真では現在の漁業労働者の姿がよく捉えられていると言えよう。

ここで話はそれるが、最近、本誌は欧米の読者も増えたようなので少し言っておきたいことを書く。 日本人は漁食民族である。タンパク質は主に海産物から摂取していた。捕鯨もそのひとつでこれが伝統的な民族慣習であったことは、 縄文時代の遺物を持ち出すまでもなく、18世紀の司馬江漢の勇壮な捕鯨図を見れば明らかである。

これは前述の中東問題とも共通しているのだが、白人キリスト教徒は、自分たちと異なる慣習、風俗をすぐ排斥・攻撃しようとする。 異なる文化を理解しようとしないのは幼稚な精神の表れだと思う。

西岡広聡氏の「一个人」は中国南京、長江の風景である。氏は1982年神奈川県生。ミラノのデザイン専門学校を卒業している。 中国には2006年に両親に従って訪れたのが最初らしいが、この写真は2008年のもの。複数紹介できないのが残念だが、独特の視界を持ち、将来を嘱目される存在である。

長谷川明

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