写真集

[街の火] 星玄人写真集

ブーン、ブーン。かなぶんが飛んでいる音が聞こえる。 ちいさな光を放って、自らも光を求めて目の前を通り過ぎる。 そのかなぶんは写真を撮っていた。 自分と同じような発光体を丁寧にねっとりと見つめながら、何度もシャッターを押していた。

どこかで見たことのある人々がいる。どこかで見た景色がある。 さみしくても、どこか暖かい。ネオンライトのような鮮明な光を放つことはない。 テカテカとした、自転車のチェーン油の光とでもいえばいいのか。 さわるとベタベタしそう。第一汚い。でも、何だか懐かしい。

都市がドンドン画一化される。 どこぞの机の上で設計され、整備されたビルディングがボコン、ボコンと音を立てながら建造される。 そこから出ることはできない。自身のベース(基盤)がそこなのだから、しかたない。 ピカピカの美しき牢獄の囚われ人となった人々は妙に明るい。光じゃなくて、まるで炎のように。 「アカルサハ、ホロビノ姿ロデアロウカ」。スラムで酒を飲み、愛人と心中した作家の言葉が頭に浮かぶ。

一方で設計図の合間を縫うように、人々が徘徊し、生活しているところがある。 星玄人氏が「街の灯」と名づけたところだ。 人間はどいつもこいつもロクデナシども。 まっすぐに歩くこともできない。 高いビルディングのはざまで、ロクに前も見えない。 だからこそ、ちいさな光を求め、自らも発光するのだ。 それらはきれいでもあり、きたなくもある人間の光だ。 星氏は甲虫の羽でブーンと飛びまわり、光あるところを撮り続けておられる。 この写真集はほんのさわりに過ぎない、と言ったら言い過ぎになるだろうか。

以前、星氏が知人のカップルを撮った写真を見たことがある。 2人は新宿ゴールデン街で知り合った。 カウンターの女性と、その男性客だ。 近いようで遠い距離で2人は時間をともにしていた。 その写真は朝のゴールデン街をバックに2人が寄り添っている写真だった。 くっついていても、埋めることのできない距離がありありと出ていた。 絶望的な状況といえるかもしれない。しかし、2人はじんわりと笑っている。 それと同じ印象の笑いは、この写真集にも何点か見ることができた。 その笑顔が私は好きだ。 明日どころか今日も見えないロクデナシがてらいもなく笑っている。 そうだ、星氏の笑顔も確かそんな感じだった。

豊田泰基

◆A4変形版 ◆写真164点 ◆本文154頁 ◆3,675円(税込)

「街の火」購入ページ
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