写真展スケジュール

須田一政写真展『角の煙草屋までの旅』/企画・構成 長谷川明
2009年3月2日(月)〜14日(土)

この一連の作品群は、今はない「カメラ毎日」誌の1980年1月号から12月号まで連載された。

須田氏は1940年埼玉生まれ。しかし長く神田富山町に在住したため、その感覚は東京(江戸)っ子に近い。 氏はこれ以前に『風姿花伝』(1978)という写真集を発表しており、6×6のカメラを駆使した映像は大いに注目を集めている。

次作ともいえるこの「角の煙草屋までの旅」では一転して35ミリ(ライカM4)に徹しているが、 それは氏自身の諧謔的な言いわけ(6×6だと飲み屋で目立っちゃうんですよ)とは異なり、氏の写真観が明確に表れていると思う。

写真は本来、美しいもの、変わったもの、事件、家族の記念などを記録するのが用途であった。 しかし須田は、「何でもないもの」にカメラを向けた。

仕事中煙草が切れたので近くの煙草屋へブラリと出かけていったというだけの短い「道中」を写真にした。 当然見慣れた当たり前の風景ばかりだ。しかし須田はそこに肩肘はらない写真の「普通さ」の原点を見たのではなかろうか。

ただの写真こそ写真ではないのかという問いかけと言ってもよい。 その発想の根底には、かつて寺山修司率いる「天井桟敷」の専属カメラマンだったという体験があったかもしれない。 舞台の上でなく日常の連続の中に人生があるというのが、意見がないといわれた男の意見といってよいのではなかろうか。

*なお今の若い人の中にはなぜ角の煙草屋なのかと思う人もいるかもしれないので付言すると、かつて角の煙草屋は大家の副業だった。 その風景は1970年頃まではよく見かけた。須田氏の写真が時代より古く見えるのは、神田が古い町だからである。 現在角の煙草屋を見たければ渋谷の「タバコと塩の博物館」にそのジオラマがある。

長谷川明

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