写真展スケジュール

広田成太/チョ・ソンテ写真展
「家族 異国の祖国」 2010年12月6日(月)〜12月18日(土)

この写真展は、北朝鮮平壌の一家族の日常の姿を撮影した今の日本ではきわめて珍しい記録である。 いや日本以外でも目にする人はほとんどいないのではないか。それはもちろん北朝鮮が自由な写真撮影は困難な環境下にあることによる。

それが可能だったのは撮影者の広田成太(チョン・ソンテ)氏が身内だったからである。 広田は1972年島根県に生まれた、父方から見ると在日二世である。父のチョン、ジンマク氏は1944年来日、戦後は教育関係の仕事を巡歴して昨年亡くなった。

これらの写真は、広田が母方の祖母である金貴先(キム・キソン)を訪ねて2006年に平壌に行ったときのものである。 金さんは1918年生まれ、戦前に来日し、1961年、当時盛んだった北への帰国運動の中で離日した(第79次船)。

広田が、この幻の祖母を撮影することにこだわったのは、写真家としてだけではなく、何か予感があったのかもしれない。 この撮影の四ヶ月後に金は88歳で亡くなっているからである。ここには、北朝鮮では恵まれている方であろうが、ごく普通の家族の日常が映し出されている。

どこの国でも普通の人は普通である。たとえ指導者や体制が異常であってもだ。私が日本人として考えたのは、 中国人、朝鮮人の家族への強いこだわりと思いは、そこが自分の所属する最初で最後の集団であるという認識にあると思う。

つまり国家や権力を最終的には信用しておらず、帰属意識が薄いということだ。 そこが日本人であることに何の疑問も持たず安住している私たちとの大きな違いのようにも思える。

それが最近、新聞などで話題になる家族の崩壊と関係があるのかどうかは考えていないが、 とにかく広田の素直な家族写真が、いろいろなことを考えさせてくれるのは間違いないだろう。

長谷川明